オタクの独り言

観劇記録。感想と解釈。文が読みづらいのはデフォ。

エリザベート

 

全キャスト観れたので感想。

キャスト比較話が大好きなのでみんな見れて良かった。

今回はルドルフトリプルキャストについて。

(観劇したらちょくちょく感想加筆していきます)

 

 

木村ルドルフ

圧倒的光属性。

彼のルドルフは家族も国も大事で自分なりに色々考えている感じが強く伝わってきた。それでいて、何かを全て一人で決められるほど強くないんだと思う。いいや、決めることはできるかもしれない。けれどその後の責任感に耐えることは容易くない。だからトートの言葉に惑わされる。

ただ自分で全てを導く力を持てずとも、自分の中で何をどうしたいかかなりはっきりと定まっている感じが、フランツの姿を思い出させた。

もう少し歳を重ねることが出来ていたならば、国を導いていける存在になれたのではないだろうか。

彼のルドルフは父親の雰囲気を感じさせることが多いが、自分の力で自分の居場所を作ろうとしてるのはシシィに似ている。

話は変わって、革命後のシーン。シシィさえも自分を見捨てた中、最後まで自分の側にいてくれたのが友達であるトートであるという事実が、彼の心には大きく響いたのだろう。そうして、トートに最後の希望を託したのではないか。だから私にはこの先トートと共に歩んでいく為に死を選んだようにも見えた。

銃を取るまでは死へ向かうことへの恐怖や葛藤が見えたけれど、銃を手にしてからは死を恐れる気配など一切なく、ひたすらに前を見つめて死んでいったのが、本当に切ない。

 

7/3、6/11ぶりに彼のルドルフ見たら死ぬ時うっすら笑顔を浮かべていて驚いた。

あの笑顔からは、まるで自嘲のような皮肉を感じた。

友達であるトートを選べば、いとも簡単に自由を得られたにも関わらず今まで心を削って色々なものと必死に戦っていた自身への嘲り。

でもその感情は自由への喜びがあるからこそ成り立つ感情なのだと思う。苦しみからの解放に対する歓喜と、しかしそれよりも強い諦めのような自嘲。彼の心情を思うととても切ない。

それから闇広での「我慢で↑きない」ってアレンジが最高。この前見た時はやってなかったからびっくりしたけど、素敵なアレンジだし、本当に彼は音域が広くて綺麗。

 

あとルドルフではないのだけれど、1幕のエーヤンとミルクでのバイト姿がとても好き。周りに溶け込んできっちり演技してる感じが良かった。

 

 

三浦ルドルフ

兎に角強い。国の行先を憂いてる感じが顕著。

自我をしっかり持っていて、革命運動にも自分の確固たる参加している感じで、とても強いルドルフだと思う。

でも、それは皇太子として強くいなくてはいけないと思って生きているからで、彼はその為に必死に一生懸命に生きてきたのだろうと思った。

シシィにさえも見捨てられた時、彼が押し殺してきた驚きや悲しみや絶望や虚無感が表へ姿を現わしたように感じた。

なんでもないような振りをしながら過ごしてきた分、シシィから突き放されたことで受けた傷は深くて、絶望は底無しなのだと思う。

ただ彼はトートがいなくても独立運動に参加し、死んでいたように思えた。そして芳雄トートは彼の死を確固たるものにする為に巧みに裏で動いている感じがした。

 

 

京本ルドルフ

弱くて儚い皇太子。傷ついてズタボロで無防備。

傷つき放題で、最早傷があるのがデフォ。

父親に理解してもらえなかった時、そして民集が自身の行為を批判している声を聞いた時、彼は憤りや自責の念ではなく、限りなく絶望に近いものを抱いていたと思う。もう自分では自分を鼓舞できないくらいに傷ついていて、そこにトートが現れたように感じた。

そしてトートの言葉に体を委ねる、それは彼が唯一できる選択であったし、彼にとってトートだけが自分を起ち上がらせてくれる存在なのだと思う。

他のルドルフと違って京本くんのルドルフは自身がトートに導かれてると気付いている節もあるのではと感じる。誰かに先導してもらうことが、或いは自分と共に歩んでくれる存在がいるということが、彼に心地よさを与えているようだった。

京本ルドルフはトートの見せる夢に溺れているようだった。それが果たして良い夢なのか悪夢なのかは分からない。けれど、国のことを思ってやったはずの行為を国民からは批判され、父親からも認めてはもらえない。何が正しいのか分からなくなった彼は、夢を見ずにはこれ以上突き進むことさえ難しかったのだろう。

そうして彼はトートに依存する。まるで虚しさを打ち消し、傷を癒そうとするみたいに。けれどトートは痛みを麻痺させているだけで、決して癒してるわけじゃない。いつか限界が来る。それが彼にとって偶々、失敗に終わった革命であったのだろう。

古川トートに関してはそんな愚かなルドルフをある意味愛してるんだろうと思った。シシィに対するような愛ではなかっただろうけど、それでも憐れみを抱いていたように思えた。

トートがルドルフに全てを教え、ルドルフはトートに手を引かれて歩いている風だ。他の二人のルドルフよりも、そうはっきりと感じられる。

トートが側にいる時は市民やハプスブルク家を思って力強く立っていられるけれど、トートが自分から離れると途端に不安げにトートの背を追いかけようとする姿は本当に切なかった。

彼のルドルフは王冠を引き合いに出されるとスッと目の色が変わって野心が現れるけど、ルキーニからの王冠を待つ時の表情だけは違っていて。まるで憧れを手にする少年のように煌めいていて、だからこそすごく切なかったし、彼の王冠への憧れってつまりは父への憧れなのだろう。

成長するにつれて思考に複雑さが増しても、心底では彼はフランツのことをとても大切に思っていたし、新聞に投書したのはただ父に危機を知らせたかったからではないか。そしてあわよくば褒めて欲しかった。ひたすら父親に認められたかっただけ、という感じがした。

だからこそ独立運動失敗後のフランツやシシィに見捨てられた時の押し殺した小さな声には溢れんばかりの悲しみが込められている。

そんな時にトートが死を唆す。その言葉で彼は初めてこの先もまだ人生が続くことに、そして死という選択があることに気付いたのだろう。そして彼は死に自由を見たようだった。

引金を引く寸前、顔に薄く笑みを浮かべるのは京本くんのルドルフの特徴だと思う(木村くんは日によって違うかもしくは途中から始めているが京本くんは私が見た回必ず笑っていたので毎回その演技プランだと思う)。

あの儚い笑みは、自由への喜びや、トートへの感謝、そしてこの世界への別れの意味を込めたもののように感じた。

あと2016年より断然歌もダンスも上手くなってて驚いた。すごい。2016年もとても好きなルドルフだったのにさらに進化してて、本当にぼろっぼろに泣かされた。

エリザベートでこんなに泣く奴いるのかってくらい泣いた。